AEA
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AEA R44CNE
OPEN PRICE
PROSOUND 6月号P142-143より抜粋

AEA R44CNEリボン・マイクの実力をトニー・フォークナー氏に聞く

 往年の名器「RCA 44BX」リボンマイクの完全復刻版として米国「AEA」社が発表した「R44」シリーズは、製作発表から早5年が経ち、去年まで米国内のみの販売に限られていた。その理由は、リボンマイクのメンテナンス、修理、特性に関する充分な理解と経験を持つ技術者がいなかったためだ。今回、海外初の代理店となった「アルファモード」は、自社の技術者を「AEA」社に派遣、メンテナンス技術の習得認定を受け正式に取扱を開始することになった。ここでは、「AEA」リボンマイクの熱心なユーザーのひとりであるクラシック音楽のレコーディングエンジニア、トニー・フォークナー氏に「R44」シリーズの印象をお聞きした。

トニー・フォークナー氏:クラシック音楽の分野で活躍するフリーの英国人レコーディングエンジニア。ワンポイント集音を信条とする同氏の録音テクニックは、特に指揮者、演奏家達から高い評価を得ている。日本にも「長岡市芸術文化振興財団」主催の「バランス・エンジニア・マスター・クラス」の講師として3度訪れている。

R44CNEとの出会い

プロサウンド(以下、PS) 「AEA R44CNE」リボンマイクを使うようになった、きっかけは?

トニー・フォークナー(以下、TF) 「AEA R44」シリーズは、その製作段階から私なりの意見を提供してきた。パサデナに住む私の友人(ウェス・ドゥーリー氏)からの電話で「古いリボンマイクに興味はあるか?」と聞かれたのが、ことの始まりだった。彼とは、よくリボンマイクやチューブマイクの話をする仲で、特にチューブマイクに関しては深い造詣がある。
 私は、こう答えた。「興味はあるが、長いことリボンマイクは使っていない」。最後に使ったリボンマイクは、昔の「STC4038」。打楽器やブラスバンドのサックスなどの音圧の高い楽器に立てていた。コンデンサーマイクは電気回路のオーバーロードで音が歪んでしまう可能性があるが、リボンマイクはよほどの事がない限り歪むことはない。ただ、唯一の弱点は、出力が低い為シグナルを増幅したとたんヒスが目立ってしまうことだ。すると彼は、こう言った。「その点は改良を施してあるから、ぜひ試してみて欲しい」と。
 早速、彼が製作した「RCA 44BX」の復刻版を借りて使ってみた。とても気に入ったが、やはりまだ出力が低く、ヒスが気になってしまった。「STC4038」(現在のColes)よりも出力は高かったものの、まだ十分ではなかったのだ。すると彼は、より高い出力が得られるよう大型のマグネットを使用したスペシャルバージョン(「R44CNE」カスタムマグネット仕様)を作ると申し出た。
 後日、完成品を持ってレコーディング現場に現れたので、さっそくザイロフォンとグロッケンに使ってみた。その音質は、実に素晴らしいものだった。以来、様々なセッションで「R44CNE」を試している。
PS 往年の名器がこのような形で復刻することについては、どう思われますか。
TF 「RCA44BX」は、かつてグレンミラーやフレッドアステアなど往年のスター達が使用した名器だ。今でもハリウッドのサウンドステージにはオリジナルモデルがたくさん残っている。ただ、それらのメンテナンスは非常に難しくなってきている。製造から63年も経つ「RCA44BX」に良好なコンディションを望むこと自体、しょせん無理な話だ。むしろ細心の注意を払って作られた「R44」シリーズのほうが、遥かに素晴らしいコンディションを期待出来る。なにしろ彼(ウェス・ドゥーリー氏)は、オリジナルマイクのスペアパーツを永年作ってきた職人なのだから。

R44CNEの活用法

PS 「R44」は、どのような使い方をすることが多いですか。

TF 私は、まだ「R44CNE」マイクから最高の結果を引き出す為の使い方を学習している最中だ。私がメインマイクとして愛用する「M50」をはじめ、チューブ系マイクの音質的な特徴は、暖かみがある分、ソリストが満足するような明確なディテイルに欠ける点だ。どのリボンマイクもそうであるように極端に伸びたハイというものはない。しかし、その高域は非常にナチュラルである。一般のコンデンサーマイクは、7k〜12kHzの帯域あたりにカプセルの共振周波数があり、それが高域の耳障りな響きを与える要因となっている。私達は、その人工的な高域のひびきを日常的に聴き慣らされているのだ。リボンマイクでは、そのような現象は起き得ない。トップエンドまでフラットに伸び、自然に減衰しているからだ。
 「R44CNE」の最大の長所は、クロースマイクとして使える点だ。ミックスに少し混ぜるだけでもプレゼンスを与えてくれる。高域の耳障りな共振が起こらないからだ。例えば、音に芯を与えようとギターのクロースマイクを少し近付けたとたん、一般的な単一指向性のコンデンサーマイクの場合、高域の輪郭がきつくなってしまうことはよくあることだ。
 私が尊敬するハリウッド映画のスコアリングエンジニア、ショーンマーフィーも私と同じ理由で「AEA R44」マイクを使っているが、どのような楽器の収録にも適していて、クロースマイクとしても使える、極めて柔軟性の高いマイクと言えるだろう。
 「R44CNE」マイクのもう一つの長所は、その外観だ。皆さん笑うかもしれないが、歌手ならお分かりいただけると思う。巨大なヴォーカルマイクは、観衆の前で歌うときと同じ効果を歌手に与えてくれる。つまり歌手の自信を増大させる心理効果が働くのだ。事実、「R44CNE」マイクを使って歌入れをしたところ、コンソールのフェーダーを動かす頻度が減少した。音質的な貢献もさることながら、その大きな外観が与える心理的効果も大きいのだ。このマイクを見たとたん誰もが笑みを浮かべてくれる。これは、プロフェッショナルにとっては強い味方だ。「R44CNE」の外観は、その音質同様に素晴らしい効果を持っている。

PS 「AEA」マイクを使って実際にレコーディングしたアルバムは?

TF これまでに2枚のオーケストラアルバムを制作した。ロイヤルフィルハーモニックオーケストラ演奏による「ファリバー・ザ・デストロイヤー」(hyperion)。もう一枚のアルバムは、ニューロンドンオーケストラ演奏によるサリバンの「ゴールデン・レジェント」(hyperion)だ。これらのレコーディングでは、アウトリガー用のマイクとして使用した。メインマイクだけではカバーしきれない大編成のオーケストラを収録する場合、メインマイクの両外側にアウトリガーマイクを立てるのだ。
 「R44CNE」リボンマイクを使った結果にはとても満足している。演奏家達の反応を見るのも楽しかったし、誰もが微笑んでくれた。それはとても重要な条件だと思うし、私もそれを期待していたのだ。いつものマイクでやっていたら、きっとドライな感じに仕上がっていただろう。
 まだこれからいろいろ試してみたいが、実際のレコーディングでは時間的な制約があるのでそうもいかない。今後、いろいろ試した上でこのマイクの能力を最大限に活かすことができる使い方を見つけて行きたいと思う。


仕様
作動タイプ   ヴェロシティー式
指向性     完全双指向性
サイドアドレス なし
最大 SPL 145DB 1%歪み率 1Khz時(低周波には大変弱いので注意)
リボン厚    1.8ミクロン
インピーダンス 270ohm
推奨作動環境  特になし。日本の気候にも十分対応しています。
感度      ノーマルマグネット時 -53.5dbu /94db SPL
        カスタムマグネット時 -49 dbu /94db SPL
重量      約3.9kg
高/幅/奥   338mm(ヨーク含む)/120mm(ヨーク含む)/80mm

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